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多文化社会で生きる現実を見つめることを迫るドキュメンタリー映画
上智大学 三田千代子

3作品とも日本で働くブラジル人の社会文化的生活を記録したドキュメンタリー映画である。
時代順に並べるならば、1992年の最初のデカセギブーム時に日本で就労した4人の女性の日本での異文化体験を語っているのが、「カルタス:日本からの手紙」。

2006年の作品「ペルマネンシア:この国にとどまって」は日本移民100周年を意識して製作された作品である。就労ブラジル人の滞在が長引くことによって、同行した子供たちが日本語に戸惑いながら成長し、ブラジルに帰国するもの、日本で生活の道を見つけるものと、子弟の教育問題と混乱するアイデンティティに焦点を合わせている。ナショナル・アイデンティティと生活の場が一致しない現代のグローバル化時代の一事例として鑑賞することもできるが、70年以上も前にブラジルに移民として渡り、90歳をこえてなおブラジルに留まっている日本人が国境を越えて生きた先駆者として登場している。

本年公開される第3作目の「ブラジルからきたおじいちゃん」は、70年余のブラジルの移民生活で様々な経験をしながらやっと移民3世にあたる孫との平穏な生活を迎えた92歳の老人が、日本で就労しているブラジルの知人を訪ね、デカセギ・ブラジル人の生活の実像に迫っている。「ブラジルの日本人は、3世でブラジル人になった。日本のブラジル人も同じだ。日本語にするのかポルトガル語にするのか選べるのは10歳までだ」とその貴重な経験から日本のブラジル人へのアドヴァイスは貴重である。ブラジル人の子弟がポルトガル語と日本語で生活できるための教育制度を日本政府が、整えることは急務である。なぜなら合法的な労働力としてブラジル人を日本に招いた以上、その子弟の教育に責任を政府は負わねばならないからである。

3作品のテーマはそれぞれ異なるが、これら3作品を通じて、日本はすでに多文化社会になっていることに日本人は気づくであろう。来日したブラジル人の最高の「贈り物」は日本に多文化社会をもたらしたことである。日本社会は、異文化との付き合いを現実に身につけなければならない時代になったのである。他方、ブラジル人は子弟教育の選択に迫られていることを知ることになろう。日本人にもブラジル人にも多文化社会で生きる現実を見つめることを迫るドキュメンタリー映画である。

 
 








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